筋トレが最強のソリューションである
今回は、Testosterone氏の「筋トレが最強のソリューションである」を整理します。
そもそも何故この本を手に取ったのか。
私は、研究者こそ”心技体”が重要だと思っています。
若手研究者は意外と多忙です。上の人から仕事を振られ、下の人がいないため自分でやるしかない場合が多く、日々忙しくなくバタバタとしています。ここで言う”上の人”は上司ではなく、他の研究室の先生であることが多いのですが、ハッキリと断ると今後の研究活動に支障が出るのでは・・・と、空気を読んでしまうことが多いです。
研究以外の業務が溜まると研究ができず、その結果、研究成果が出なくなります。そうなると、負のスパイラルに陥ります。
研究者である以上、研究の技術を鍛えることはとても大事なのですが、負のスパイラルに陥っても負けない"根性(気持ち)"も大事になります。そして、時に締め切りに追われ、どうしようもなく徹夜をすることもあるので、その時は"体力"も不可欠です。
と、負のスパイラルに陥って、気持ちが滅入っていた私が出会ったのがこの本です。
1章の初めのページには「メンタルが弱ったら試すべき5つの行動」が書かれています。まさに今の私にぴったりの内容です。
- 8時間睡眠の確保
- 週3回の運動
- 朝起きたら太陽の光を10分は浴びる
- 3食しっかり食べる。
- 誰でも良いので悩みを話す。
5つの内、「3食しっかり食べる」しかできていない私はダメダメでした。
さらに、自信がない人は筋トレをして下さい、として次の5つを理由として挙げています。
- 身体がカッコよくなる。
- 異性にモテる。
- テストステロンというホルモンがあふれて気分上々
- 上司も取引先もいざとなれば力付くで葬れると思うと得られる謎の全能感
- 恋人に裏切られてもバーベルがいるという安心感
最後の2つのは正直理解できませんでした・・・が、ただ筋トレにより自信がつくらしいのです。
私自身、この3年間で体重が5kgも増えてしまし、そして研究では負のスパイラルに陥っているので、自信なんてものは全然ありません。
その状況を打破してくれるのが「筋トレ」であるならば、やらない理由はありません!
そして、筋トレ洗脳本かと思いきや、とても納得することも書いてありました。
世界をいくつも持っておく。仕事の世界、趣味の世界、家族や友人との世界、〜省略〜、何よりも一点集中は気張りすぎちゃってよくない。気楽にゲームソフトを数本同時進行する感覚ぐらいでちょうど良い。
研究がうまくいかないと、頭の中が「研究研究研究」と一点集中してしまい、それで結果が出ないと負のスパイラルへ・・・というがあります。
そうか、色んな世界を楽しめば負担が分散するのかと目から鱗でした。
他にもこんな素晴らしいことを述べています。
誰も見ていない時にどれだけ自分で自分を追い込めるか。この一点だよ。切磋琢磨できる相手がいないだとかモチベーションが保てない事を環境のせいにしている時点でダメだ。自分の手綱を他人に握らせるなんておかしいだろ?
私は何かに甘えていただけでした。だから、まずは筋トレ!
って、そんなに筋トレしても研究の成果には一切ならないのけどな、とネガティブな考えが脳裏に浮かンダのですが、さすが筋トレです。
マッチョには栄養学や筋トレの知識、それらを踏まえ精密なプランを作成する計画力、忙しい中でもプランを遂行する実行力、誘惑に惑わされない意思力が備わっている。
マッチョはただの筋トレ馬鹿では無いということです。マッチョを研究者に入れ替えても話は通じると思います。最近はアルコールの誘惑に負けることが多く、お酒の量が増えてしまいました。
マッチョになれば、研究も進む!
そう信じることにします。
そして最後に「勘違いでもいいから自信と情熱を持つ」ことを言及しています。
他人の批判にいちいち落ち込まない自信を持て。才能が無いと言われてその道を諦める程度の情熱では成功はない。最初は勘違いでもいい。自信と情熱を持て。そのうち本物になる。
若手研究者こそ、大胆で新規性の高い研究に柔軟に取り組めると思っていますが、そのような研究テーマは意外と業界に受け入れられないことがあります。
それは評価できる人がいないからです。よくわからない研究テーマよりも、着実な進歩が予想しやすい研究テーマの方がウケが良いのだと思います。
評価者のための研究になってしまうのではと懸念していますが、まずは若手研究者として学術論文という成果を生産し続けないといけません。そのためには、勘違いでもいいからやり続けることが大事です。
「筋トレは人生を変える」
Testosterone氏は、そう言っているように思います。
Testosterone氏は他にも多数の著書を出していますので、気が向いたら違う本を読んでみたいと思います。
それでは
テキストマイニング入門
今回、整理する本は「テキストマイニング入門 ExcelとKH Coderでわかるデータ入門」です。著者は、末吉美喜さん。ビジネスで使える統計分析に関する書籍を多数出版しているそうです。
ここ最近、新しい研究方法にチャレンジしようと色々と探っていたところ、”テキストマイニング”という手法があることがわかりました。
テキストマイニングとは、大量の文字情報(テキスト)を分析することにより、何らかの傾向を抽出する、あるいは仮説を検証する方法です。
私の研究分野には、大量のテキストデータがあるにも関わらず、あまり分析した事例を見たことないということで、手法を身に付け、研究に適用することにしました。
テキストマイニングの初心者ですので、まずは教科書探しから。何かを開始するときには、挫折しない工夫が大事だと思っているので、次のポイントを抑えた書籍を探しました。
初心者が挫折しないためのポイント
- 薄い本:すぐに読み終わるため、達成感がある。
- わかりやすい(専門用語が少ない):科学としての厳密性よりも、わかった雰囲気を味わう。
- 手を動かす内容:飽きずに分かった気、できた気になる。
ということで、この視点で書籍を探したところ発見したのが本書です。
データ分析やテキストマイニングの重要事項を、会社の先輩と部下の会話によって紹介してくれるので、さーっと流し読みしながら読むことができます。また、サンプルデータをHPからダウンロードできるので、サンプルデータを活用して手を動かしながら、テキストマイニングを学ぶことがもできます。
私は、2日間でこの本を読破しましたが、実質6時間程度で読破したので、やる気のある人は1日で読破できるかと思います。
そもそも、書籍のタイトルのある”KH Coder”は、立命館大学の樋口耕一先生が開発したフリーソフトウェアです。詳細はKH CoderのHPを見ていただいた方が良いかと思います。こんなに素晴らしいソフトウェアが無料で使えるなんて、樋口先生に感謝です。
KH CoderのHP:
KH Coder: 計量テキスト分析・テキストマイニングのためのフリーソフトウェア
実は、樋口先生が書いた書籍も購入したのですが、私のように”とりあえずテキストマイニングの雰囲気を味わいたい!”という人には、ハードルがちょっと高いように思ったので、まずは本書に読むことにしました。勿論、テキストマイニングとKH Coderに慣れてきたら樋口先生の著書も読みます。
樋口先生の著書
では、肝心の中身の話ですが・・・、本当にわかりやすい本なので、自分で手を動かしながら学んだ方が良いかと思います。
私は、本書のテキストデータだけはなく、「青空文庫」から福沢諭吉の無料テキストデータをダウンロードして、テキストマイニングをしてみました。
青空文庫:
分析結果がこちら。
とりあえずやってみただけのデータなので、それぞれの図に特に意味はないのですが、初心者でも数時間後にはこのような図を作れるようになります。恐るべし、KH Coder。
本来なら、2つの図の意味(共起ネットワークって何?、対応分析って何?)を勉強した後に、このような分析をすることが望ましいのだと思います。そうすると、ああだこうだと考察ができたり、もっとこんな分析ができたら良いのにと修正ができます。
しかし、初心者である私からすると、まずはやって見て、どんなことができて、どんな結果が得られるのか、雰囲気を掴み、それから深堀りする方が良いのではと思い、とりあえずやってみました。これから、どんどん勉強していきます。
最後に、本書から学んだデータ分析・テキストマイニングの要点を整理します。要点を整理しておくと、見返すのに便利ですからね。
データ分析の要点
- 課題の設定
- 計画
- データ収集
- 分析
- 結論
のサイクルを回す。1回でデータ分析は終わらず、何回もサイクルを回すことが大事だそうです。
初めからキッチリした分析するために時間をかけるよりも、まずとりあえず分析してみて、とりあえずの結論を出してみる。その次に、もっとこうした方が良いというアイデアや違うデータも実は必要ではと思いつき、2回のサイクルを回す。このサイクルを回し続けることで、より良い結論を得る、という流れです。
続いて、テキストマイニングの要点
- テキストデータを用意する
- とりあえず、KH Coderで分析(前処理)してみる。
- "抽出語リスト”でどんな言葉が多いか見てみる。
- ”KWICコンコーダンス”で原文をチェックし、文言の使われ方を知る。
- ”語の取捨選択”で強制的に抽出したい言葉と分析したくない言葉を定義する。
- とりあえず、作図してみる(共起ネットワークや対応分析など)
- 作図結果を見ながら、データクレンジング(テキストデータの整理整頓)へ
- 再度、作図する→データクレンジングを繰り返し、考察へ。
KH Coderは、テキストデータの分析だけではなく、外部変数データ(性別や年代などの変数)も併せて分析することができます。
そのため、例えば、自由記述アンケートを分析した結果、60代の男性は〇〇の商品に〇〇機能を追加して欲しいことが分かった、のような分析もできます。
本当に便利です!
テキストマイニングを研究で活用するためには、データの取得は勿論のこと、統計学の知識、図を解釈する能力などなどが必要ですので、引き続き勉強していきたいと思います。
それでは。
企業研究者のための人生設計ガイド その2
本日も、前回に続いて「企業研究者のための人生設計ガイド」の備忘録で、第2部から最後までを掲載します。
■前回の記事
第2部は、鎌谷氏の海外での生活・業務の紆余曲折が具体的に書いてあり、私が拙い日本語で概要を書くよりも、実際に本書を手にとって読んだ方がその内容の面白さ・リアルさが伝わると思います。ですので、是非読んで欲しいです。
鎌谷氏は海外で生活を送るわけですから、当然英語が必要になります。そんな鎌谷氏は、私と違い、英語が得意という自負を持って海外へ行ったのですが、ネイティブスピーカーのマシンガントークとディスカッションに対応できず、当初は一言も英語を発することができなかったそうです。
そんな状態の鎌谷氏は、一念発起して英語を勉強し直し、最終的に英語を使えるようになるわけです。鎌谷氏はどのように英語を勉強したのか?
アメリカ映画を「ディクテーション」するという手法である。
ディクテーションとは、テレビやラジオなどの音源を文章に書き下す作業のことを言います。私もやったことはありますが、この作業は本当に地味です。苦行です。1分の音源を文字起こしするだけで、数十分もかかります。次第にやる気がなくなります。まさに拷問です。
しかし、鎌谷氏はディクテーションの重要性を次のように説きます。
この勉強ができるかどうかがあなたの語彙力を決めると言っても過言ではない。逆に言えば、ディクテーションによる勉強を拒否する人に英語を含めた外国語をマスターすることは絶対にないと言い切れる。それくらい効果てきめんな勉強法である。
はい、わかりました。私も研究者の端くれ。英語を使う機会はたくさんあります。
ディクテーション、やります!
鎌谷氏は、会社の事情で転職を余儀なくされました。このご時世、同じ会社でずっと働き続けることは難しいことかもしれません。自分から違う会社へ行きたくなる場合もありますし、会社の倒産や工場の閉鎖も考えられます。
こんな時代に研究者はどのような姿勢を保つべきか、鎌谷氏は元上司の言葉を引用して、次のように述べています。
It is not important that you are employed. It is more important that you are employable.(君が今現在雇われていることが大事なのではない。君が誰かから雇ってもらえるような人であり続けることの方が大事なんだ。)
なるほど。つまり、柔軟さがが必要なわけですか。特に、私のような若手研究者は、自分の専門分野を高めるだけではなく、少し別の分野に興味を持つことが大事だと思います。そうすることで自身の研究の幅が広がるわけですし、就職活動にも効果を発揮します。ニッチな研究分野では、なかなか公募が無く、公募が出たとしてもそこに何人もの強者が応募してきます。そこで、元の専門分野だけではなく、他の分野の知見を有していれば、他分野への公募へも応募することができますし、専門分野でも自分のオリジナリティを前面に出せます。
他にも、いくつもの大学・民間研究機関を渡り歩いた鎌谷氏は、研究者として能力を延ばす考え方として担当教授の言葉を紹介しています。
他の国で研磨を積むことが研究者しての器をより大きくする
海外研究機関で働かないと昇進にも響く、というような噂を聞いたことがありますが、自国、あるいは自分の大学を離れることは、他の文化や研究のレベル感、他者とのコミュニケーション方法を学ぶことにつながるはずです。
私も短期間の留学(合計1ヶ月程度なので、留学と言えるかは怪しいですが・・・)をしたことがありますが、チャンスがあれば数年の研究留学にトライしたいです。そうすることで、研究は勿論、自分の人生が豊かなものになる気がします。
以上です。
第3部ではお二人の企業研究者とのインタビュー記事が掲載されています。冒頭で述べたように、私が書くよりも読んだ方が面白いので、是非本書を手に取って読んで欲しいですね。
それでは。
企業研究者のための人生設計ガイド その1
今回勉強になった本は「企業研究者のための人生設計ガイド」です。
著者は鎌谷 朝之氏。鎌谷氏は、大阪大学を卒業後、カリフォルニア大学アーバイン校大学院博士課程修了、その後、3つの企業を経験しております。本書の中に、この非常に面白い経歴の詳細が書かれています。
この本は、「企業研究者のリアルな姿を知って、研究者を志す学生の人生の選択肢を増やす」ことを目的としています。本書は、3部(合計12章)から構成されています。本日は、第1部で特に勉強になった箇所を整理していきます。
そもそも私が本書を選んだ理由は、”企業研究者”という言葉が目に付いたからです。私は、工学系出身なのですが、学部・修士・博士の学生が研究所へ行くことは稀です(勿論、分野に依りますが)。そのため、企業の研究者はどんなことをしてるのかなぁと興味を持ちました。また、大学教員は基本的に多忙なため、本書のように”研究者の活動”を書くことも稀です。特に、著者のような企業研究者となると、企業の情報を公開するかもしれないということで、企業から出版NGと言われる可能性もありそうです。
そのため、本書を通して、企業研究者の姿、研究者の一端を学ぶことができると思いました。
では早速ですが、1部では次のような書かれていました。
『平成29年度の科学技術研究費は19兆504億円にのぼり、このうちの7割に相当する13兆7989億円が企業の研究費というのだ』
『日本国内の研究者の約57.3%を企業研究者が占めている』
私はこの事実を全く知りませんでした。研究者=国や大学の研究者と思っていたので、研究費の金額も研究者も数も企業の方が多いということに驚きました。
そんな事実から、著者はさらに大学研究と企業研究の違いを述べています。
『企業の研究は営利目的であることだ』
『企業の研究開発活動の場合は短期間で製品やサービスとして世に出ることが多く、売り上げの大小にかかわらず社会の役に立てていると実感することができる』
大学研究は、一見、何のための研究かわからないことが多いことは確かなので、企業の方が研究がより社会に近いということは事実だと思います。ただし、大学研究と企業研究のどちらを好むかは個人の価値観の問題であるので、一概にどちらが良いとは言うことができません。本書の中でも、企業ならではの苦労が多く散見され、本書を読む人にとっては単に”面白い”経験なのだが、著者はさぞかし苦労したんだろうなぁ・・・と思いました。
他にも、筆者が思う研究者像として、次のように述べています。
『自分の研究テーマどんどん膨らませて発展させていく柔軟さか、〜〜〜将来の可能性を信じてひたすら1つの分野を追求するストイックさ、もしくはその両方が求められると思っている』
この文章を読んだとき、はっと我に帰り、”そんな能力を持っているかなぁ〜”と思ってしまいました。最近、新しい研究分野に取り組もうと思っています。同じ研究を続けていると行き詰まり感が若干出てきます。研究者は論文を書いてナンボの世界であるので、行き詰まり間が無いに越したことはないです。私の分野にも、流行りの研究内容というのはあるので、学術的な価値を考慮しながら、新しい分野にチャレンジしたいと思います。
さらに、プレゼン能力についても言及しています。
『日米を含めた世界中の理系研究者に共通するのが「専門外の人に説明するのが下手」ということだ』
私もまさにプレゼン下手である。プレゼンが無ければなぁ・・・と何度思ったことか。就職面接や研究費獲得面接を何度も経験してきたが、その時の面接官は専門外であることが殆どです。同じ研究分野であれば、今どんな研究をしていて、どこが新しいポイントなのか、は大体わかります。しかし、専門外の人に対しては通用しません。それは、知識の出発点が違うことも大きいですが、そもそも使う”言葉”が違うのです。これが厄介。同じ言葉でも違う認識を持つ場合が多く、言葉のすり合わせ無しに、プレゼンをすることが如何に困難か。何度、面接をしても、この難しさをなかなか克服できていません・・・。
本日はここまで。1部には、他にも色々なことが書かれていますので、興味がある人とは是非一読ください。
次回は2部以降をまとめていきます。