若手研究者、日日是好日。

大学の若手研究者。このブログは研究内容や勉強内容、日々の活動などの備忘録。

研究費獲得のための面接審査、そして教訓

 この記事では、これまで私が経験した研究面接の教訓を整理します。あくまで個人的な見解です。


 申請書の書き方については、いくつか参考書があるのですが、面接に関してはめっきり無いんですよね。一般的な就職面接の内容も参考になるかもしれませんが、やはり研究に特化した面接への心得を知りたいです。

 

申請書の書き方

 

 はっきり言って、面接が苦手な私にとっては面接がない方が良いのですが、そうも言ってられないのがこの業界です。
 そして、面接審査は難しい。

 

 外部資金を獲得するためには、概ね次の2つの段階があります。

  • 研究申請書を提出する。→ 採択・不採択
  • 申請書の通過後、研究面接を実施する。 →採択・不採択

 申請書だけなのか、面接もあるのかは、外部資金によって異なります。科研費の場合、私のような若手研究者は申請書のみの場合が多いと思われます。また、私の分野に研究者が少ないせいか、結構高い割合で申請書は通過し、面接審査になることが多いです。

 私はこれまで合計6回の面接を経験してきました。が、いつまで経っても上手くなりません。

  • 学生の時に3回
  • 博士取得後に3回

 

 面接官の人数は様々なのですが(昔のこともあり、記憶がかなり曖昧なのです)、

  • A:5名程度+事務局数名
  • B:面接官15名+事務局10名
  • C:面接官5名+事務局数名
  • D:面接官10名+事務局10名
  • E:面接官20名+事務局15名
  • F:面接官5名+事務局5名

となっており、面接官の人数はバラバラでした。さすがに30名近くの方々が部屋にいると圧迫感が凄いのですが、最近は若干慣れてきましたね。また、面接官の人数は、当然、面接前にはわからないので、初めから30人ぐらいいるもんだと思って、面接に取り組むようになりました。
 多分ですが、面接が苦手な人にとって、予め面接部屋の雰囲気を想像しておくのって大事です。終始和やかなのか、ピリピリしているのか、知っている人が面接官にいるのか・いないのか。面接発表の立ち位置はどこなのか。ポインターはあるのか・無いのか等々です。


 これは私の認識ですが、面接官が少ない場合には、全員が平等に審査の権限を持っていて、一方で面接官が多いと、その内の数名が審査の権限を持っていると思っています。そのため、何故こんなに人が多いのか!?と疑問に思うことがあるかと思いますが、多分、実際に審査する人が予め決まっており、その審査員が質問をすることになっていると思われます。なので、人数だけを見ると、結構圧迫感はありますが、質疑応答の人数と考えると、どの面接もあまり変わりません。

 

 ここからは、6回の面接を受けたきた教訓を7つ述べます。あくまで個人的な見解なので、実際には間違っていることもあります。そもそも、私は面接官になったこともないので、あくまで私の推測ということです。

 

1.面接時間は必ず守る。
 学生だった頃の面接時、少し面接時間をオーバーしただけで、物凄く注意されました。面接時間のオーバーは、練習不足・面接に対する思い入れが無いという悪い印象を与えかねないので、それ以後、面接時間にぴったりとなるように練習しました。

 

2.面接官は時々上から目線で質問してくる。
 面接官と申請者は対等な立場であるはずですが、理解に苦しむ面接官も時々います。そんな面接官に出会った場合には、私はいつもアンラッキーだったなと思います。

 

3.誰が面接官かを予め考える。
 私の場合、完全に同じ分野の人が面接官になることは極めて稀です。どこかで見たことあるな、名前を見たことがあるな、程度の人は面接官にいますが、面接官は私のことを知らないことが多いです。
 また、ニッチな研究分野では、面接官の内、1名が申請内容を理解していれば良い方で、面接官が申請内容を完璧に理解していることはほぼ無いです。あくまで面接であり、学会発表では無いことを理解しておく必要があります。助成金の募集要項に、専門家以外の人にもわかるように申請内容を書いてください、とありますが、それは発表にも同じことが言えます。

 

4.面接官は、申請書を読んでいない、発表を聞いていないと考える。
 質疑応答の時間になると、明らかに申請書を読んでいない人・発表を聞いていない人がいることがわかる時があります。例えば、「私はカレーを作ります」と申請書に書き、そして「カレーを作ります」と発表しているにも関わらず、面接官からは「何故、カレーは作らないのですか?」という質問が来ることがあります。何回かこの状況に遭遇し、その度に頭の中がフリーズしてしまいました。
 確かに、面接官は教授や准教授、国立の研究所の研究者がなることが多く、多忙の中、面接官になってくださり、時間を割いて面接会場にいらっしゃいます。また、普通、面接は1日に詰め込むことが多く、10人や20人の面接を1日で実施することもあり、夕方に近づくと疲れが出てくることも予想されます。面接官も人間ですからね。しょうがないと思うこともあります(ただ、面接中に寝られた時には流石に一言言いたくなりましたが)。
 申請書を読んでいない、発表を聞いてない場合には、もう1度繰り返して説明するしかなりません。「少しわかりにくかったかもしれませんが、ここでは〇〇ということでカレーを作ります。」と丁寧に説明するしかありませんね。

 

5.面接官がバイアスを持っている場合
 面接官が申請内容をなんとなく把握している、あるいは単語を知っている場合には、面接官の頭の中に「これはこうでしょ」という思い込みがある場合があります。
 「カレーを作るって言ったけど、何カレーなの?ポークでしょ?」という感じです。実際にポークカレーならラッキーですが、大抵違うカレーを作ることになるので、そこで申請者と面接官でギャップが発生します。そのギャップが発生したら、面接時間の中での対処は難しいです。質疑応答時間は短いですからね。
 申請者としては、「申請書には「キーマカレー」と書いて、面接審査に来たのに、このタイミングでポークカレーかよ!」という気持ちになりますね。面接が苦手な人にとって、面接の準備は本当に大変なので、それだったら書類審査で落としてくれよ、という話です。今のところ、なんらかの打開策は見つかっていません。「ポークカレーもいいなと思ったんですが、〇〇と言う理由でキーマカレーにしました」ぐらいでしょうか。


6.研究のオリジナリティは絶対に明文化するか
 申請書に書いてあるので、面接官は必ず研究のオリジナリティを読んでおり、頭に入っているはずですが、上述した通り、申請書を読んでいない、あるいは記憶に無い面接官もいるはずです。そのため、申請内容の面白さ、独創性、社会的要請を簡潔に記載することが重要です。
 ここでポイントなのが、面接官にとって申請内容が採択されるだけの価値があると思わせることです。申請者が面白いからと言って、面接官が面白いと思うとは限らないですよね。特に、社会的要請は、助成金の目的に合致していることが大事です。真夏のコンビニでおでんを売れないように(意外に需要があるかも)、助成金が何を求めているかを予め明確にする必要があります。申請内容を採択することで、何が解決するのか、何が達成されるのか、その結果どんな波及効果があるのか等々を整理しておきましょう。


7.面接官が研究方針を持っている場合
 面接官も研究者ですので、こんな研究をしてほしいなという願いがあるはずです。願いを心の中に持っているだけなら問題ないのですが、その願いを申請者の研究に適用させようとすることがあります。
 例えば、申請者はじゃがいも、玉ねぎ、人参、牛肉をスーパーで購入し、カレーライスを作ろうと思っています。ところが、面接官はクリームシチューが食べたいんです。面接官は、間髪入れず、このように申請者へ質問します。「なぜ、クリームシチューじゃないのですか?その具材だとクリームシチューの方が美味しいでしょ。是非、クリームシチューを作って欲しいのですが。」
 申請者の頭の中は、「いや、待ってくれ、申請書にカレーを作ると書いたよね。そして、今の発表でもカレーを作ると・・・なぜ、面接官はクリームシチューとこの場で言うのか・・・???」
 勿論、申請者はカレーが望ましい理由をいくつも答えますが、質疑応答時間は限られています。ましてや、カレーかシチューかは、個人の興味の問題であり、その点を評価対象にされた時点で、採択の希望を薄いです。この場合は、申請者としてはどうすることもなく、只々そのような面接官に遭遇しないことを祈るのみです。運が悪かったんです。

 

 以上です。
 途中で書いたように、このような面接官がいることを想定しながら面接に取り組むと、心の余裕ができて、ほんの少しだけ採択が近づくかもしれません。私のような平凡な研究者は、準備と想定、そして運で生き残っていくしかありませんかね。口下手で面接が苦手だからこそ、臨機応変な対応には期待できず、面接の前で決着をつけようという作戦です。

 

いつかは申請書についても整理することにします。

 

それでは。